2015年10月29日木曜日

子ガメの旅立ち

10月26日。いよいよ待ちに待ったウミガメ産卵の見学当日です。午前中4時間授業でいったん児童生徒は下校しました。当日はアフガニスタン北部を震源とする地震が発生し、建物が倒壊したり、アフガニスタンやパキスタンの人々が被害に遭われたりというニュースが報じられました。はたしてウミガメは産卵にやってくるのか。学校からバスで現地へ向かいます。
夜19時。集合してスクールバスでウミガメ産卵場所のすぐ近くに所在するWWF事務所に向かいます。高い建築物が少なくなり、明かりが減り、海の近くの雰囲気が強くなるにつれて、みんなの気分もますます盛り上がります。
WWF事務所ではマネージャーのアリさんがウミガメの生態などについて説明してくださいました。「活動の中で大変なことはなんですか?」との児童の質問に対する答え、「人々に活動について周知してもらい、納得してもらうことが難しい。ゴミを捨てないでと言っても捨てる。人を動かすということが大変です。」に「なるほどー。」と納得する一同でした。
ウミガメについての紹介VTRも見せていただきました。カラスや野良犬が小さい子ガメをつついて食べてしまう様子に、みんな言葉をなくしてしまいました。えさだと思ってビニール袋を食べてしまったカメが死んでしまうということは事前に学びましたが、それ以外にもいろんな危険があり、カメが無事に生きていくのは難しいと知ります。
観察の注意事項を聞き夜10時半、いよいよ砂浜へ。月の光の下、波の音だけが聞こえてきます。「こんなに遠くまで見渡せる広い場所に来たのはカラチではじめてかも。気分がいいですね。」という生徒の声も納得の、貴重な経験です。
ほどなく幅40センチメートルほどの、海から陸へ何かを引きずったような跡、そしてその先に直径1.5メートル、深さ30センチほどの穴が。もしかして?聞いてみるとやはり、これはウミガメの産卵の跡だそうです。
「こっちへ来てみて。」というアリさんの言葉。視線の先では、手のひらにのる大きさの小さい子ガメが、平らな足を上下にパタパタと動かしていました。言葉にならない驚きの声が漏れます。親指と人差し指でおそるおそるつまむ児童生徒たち。ふ化直後のカメということでした。本当に小さくて、ほとんど重さを感じませんでした。
さあ、子ガメの旅立ちです。海に近いところで、放流します。砂の上に置くと、満月の光しかない暗がりでも、波が打ち寄せる方向へ元気よく歩いて行きます。その後ろ姿が波に覆われ、波が引くと、もうその小さな姿は見えなくなっていました。
産卵は見られませんでしたが、ふ化直後の子ガメに触れるという貴重な体験ができた今回のカラチタイム。カラチの自然に触れ、いろいろな思いが児童生徒の胸に去来します。自然を大切にし、小さな命を大切にし、ますます学びを深めていきたいと思った夜でした。